神保町花月「限・界・密・室!」

@神保町花月 19:00 B8

初日に学んだので、15分前には着席。演出とアナウンスと心理戦を堪能。提供されるものは最大限受け取らなきゃね!

笑いどころが増えることはなく…初日とほとんど同じシリアスな舞台。神保町花月でこれは珍しい。
奇抜探偵で福田さん脚本に慣れている囲碁将棋が、そこそこ笑い部分を押しこんではいたけど。それも前半だけ。
完全に笑い無しの人も多数。芸人さんにはツラいかもしれないけど、見てる方は緊張感あって手に汗握る。
文田さん声抑えてた?喉やったのか演出か…どっちにしても、メガネ無しの風貌で細い声だと儚げだね。役には合ってる。
西島さんの早口が回ってないよ!あのセリフ量じゃ仕方ないのかねぇ。聞き取れないところが多々。もったいない。

初日は後ろの方だったので、細かい演出もよく見えた。めちゃくちゃ凝ってるな!音で本物だってのはわかってたけど、近くで見ると迫力あるね。
表情や細かい動きはやはり前じゃないと見えないよね。終盤の文田さんのシーンが好きなんだ。西島さんあんな感じでやってたのね。なるほど。
映像をちゃんと見ようと思っていたのに前半あまり見てなかったという…なんてこった。オープニングだけでいいから映像もう一度見たい…。
開演前のアナウンスは三代目姐さんで間違いないでしょう。最後のセリフの声、ネタ中の声そのままだ。劇中に出てくる声だけの女性もおそらく。

例のアレ、馬とリンゴと届かぬ手と釣り人。中村さんといぬで、劇団中村を結成。中村さんは有馬くんがお気に入りのようだ。太田さん拗ねてるw
本編でボケられない分、ここで巻き返す中村さん。日替わりだよねぇ。全部見てみたかった。

【7/15追記】
――1年前に起きた浅間山中爆発事件を覚えていますか?爆発の原因は人工的な爆発物の可能性が高いとされています。警察は事件か事故か集団自殺か断定できていません。
――おや?雨が降って来ましたね。あの日と同じですね…。

ジャーナリストの田富功利(橘)は、1年前の爆発事件についての本を執筆中。新堂刑事(中村)は田富の持ち込んだ犯人の手記を見る。そこには事件の全貌が書かれていた。犯人の指紋が付いているから、と新堂に手袋を付けさせる田富。

窓も扉もない部屋に閉じ込められた男女5人。何者かに眠らされ、気付いた時にはこの部屋にいた。左手には手錠が嵌められ、1本の鎖で全員が床の金具に繋がれていた。お互いに面識はなく、携帯やその他所持品はすべて取り上げられていた。
5人はお互いに自己紹介をする。吉良小百合(若尾)、根間恒彦(根建)、平誠吾(西島)、矢内修一(文田)、麻生空太(江崎)。

最後に目覚めた麻生のポケットには、メモが入っていた。
『始めの箱を開けよ 終わりの始まり』
部屋の中央に置かれている箱には、「始」の文字が書かれていた。5人が座っていた椅子にも、それぞれ大字で1~5までの文字が書かれている。
僕は何があっても大丈夫ですから、と言う麻生に鎖を寄せ、「始」の箱を開ける。中には黒い箱とメモと鍵が入っていた。
根間は黒い箱を開けてしまう。爆弾と思われるカウントダウンが始まり、根間の胸元に赤い光が当たる。危ない!叫んだ麻生に突き飛ばされ、根間は尻餅をつく。壁にはボウガンの矢が刺さっていた。

出てきた鍵で「壱」と書かれた箱を開ける。メモと1箇所にしか掛けることが出来ない携帯電話が出てくる。
『壱の犠牲 吉良小百合 愛を捧げよ』
吉良は大学生。大学教授と不倫していた。登録された通話先は、不倫相手の奥さんだった。不倫を告白する吉良。しかし夫人は、また?と鼻で笑う。私は理事長の娘。あの人が研究を捨ててまで私と別れるわけないじゃない。
最初から愛なんて無かったのよ…。鍵の音がする。二重底になっていた箱の中から、メモと鍵と黒いボタンが出てくる。
『誰が見つけた 死んだのを見つけた
それは私よ ハエがそう言った
私の眼で 小さな眼で
私が見つけた その死骸見つけた』
マザーグースのクックロビンの一節だということは判明したが、5人のうち誰も意味はわからない。

被害者の吉良は大学教授と不倫関係にありました。事件当日、大学教授の奥さんへ吉良から電話が掛ってきたのはご存知ですよね?その手記に書かれている通話内容と一語一句ほぼ間違いないやり取りをしたそうです。
したがってこの手記は、犯人の犯行計画書ではなく犯行後に書かれたものだとわかります。
これは…鑑識に回しても良いですか?どうぞ、コピーは取ってあります。ありがとうございます。

出てきた鍵で「弍」と書かれた箱を開ける。メモと1箇所にしかメールを送ることが出来ない携帯電話が出てくる。
『弍の犠牲 根間恒彦 道を捧げよ』
根間は高校3年生。メールには彼がマリファナを吸引している姿を隠し撮りした写真が添付されていた。送付先は彼の通う高校。進学先の大学も決まっていたのに、終わったよ…とうなだれる根間。
メールを送信すると、鍵の音がする。二重底になっていた箱の中から、メモと鍵と黒いボタンが出てくる。
メモには5つのツイッターアカウントが書かれていた。5人はそれぞれ自分のアカウントだと言う。しかしお互いのアカウントには見覚えがなかった。

被害者たちはお互いに面識はなかった。しかし全員がツイッターユーザーでした。

出てきた鍵で「参」と書かれた箱を開ける。メモと小切手が出てくる。
『参の犠牲 平誠吾 財を捧げよ』
平は会社社長。一緒に入っていたメモには、日本赤十字社へ8億の小切手を送るよう書かれていた。会社も従業員たちも終わりだ!不倫や大学に8億の価値があるのか!?と荒れる平を矢内が止める。吉良さんも根間くんも、こんなことが無ければ失いたくないものだったんだ。大切なものに大きいも小さいも無いよ。
部屋の背後に紙1枚が入る程度の隙間を見つける。そこに小切手を差し込むと、鍵の音がする。二重底になっていた箱の中から、メモと鍵と黒いボタンが出てくる。
『2010年7月10日』
昨年の日付が書かれた紙。しかし特に大きな事件があったわけではない、と5人は首を傾げる。

彼らのアカウントはお互いフォロー関係にはありませんでした。しかしアカウントのリプライ先を片っ端から調べると、面白い事実が浮かび上がってきたんです。

出てきた鍵で「肆」と書かれた箱を開ける。メモとナイフと消毒液と包帯が出てくる。
『肆の犠牲 矢内修一 才を捧げよ』
矢内はピアニスト。ナイフで手を傷付けて、二度とピアノを弾けないようにしろということでしょうね…と笑う。私のピアノに8億の価値はありませんよ。その皮肉はキツいだろう。こうでも言わなきゃ決心が鈍りますから。
ナイフで自分の左手を刺す。一度では鍵の音は鳴らず、何度も何度も。鍵の音が鳴った瞬間、平が矢内の手を止めナイフを取り上げた。用意されていた消毒液と包帯で手当てをする。二重底になっていた箱の中から、メモと鍵と黒いボタンが出てくる。
『人を呪わば穴二つ』
やはり心当たりが無い5人。根間が口を開く。そりゃアイツ死んだらいいのにと思ったことくらいあるけど、それだったらこの部屋いっぱいになっても足りないだろ。

5つのアカウントは事件当日付近から投稿が無くなっているのですが、ひとつだけ、2010年7月10日から投稿が無くなっているものがありました。最後の投稿は「死にたい」というものでした。アカウントの持ち主は学生。恐らく学校でいじめを受けていたんでしょう。
問題はその投稿に対するリプライです。「死ね」という意味のリプライが4件ありました。それが、被害者たちのものと一致したんです。しかしそれは犯人の直接の動機ではありません。

出てきた鍵で「伍」と書かれた箱を開ける。メモと封筒が出てくる。
『伍の犠牲 麻生空太 命を捧げよ』
封筒の中のメモには『4つのボタンを同時に押すと贄に死を授ける』と書かれていた。麻生はうなだれる。僕には命くらいしか捧げるものがありません。根間くんのように将来があるわけでもない、平さんのように財産があるわけでもない、矢内さんのように才能があるわけでもない、吉良さんのように大切な人は、もうなくしました。実は僕、自殺しようと思ってたんです。だからいいんです。僕を、殺してください。
覚悟を決める4人。麻生さんごめん!と謝ろうとする根間を止める平。謝るんじゃない!許してもらおうとするな!今から私たちは、人を殺すんだ。
平の合図で、全員がボタンを押す。鍵の音がする。爆弾のカウントダウンが止まった。

全員が麻生に駆け寄ると、麻生は身体を起こして笑い出した。
皆さん愚かですよ。誰か1人でもボタンを押さなければ、ボウガンの矢は僕の心臓を貫いていた。しかし僕はまだ生きている。
ポケットから鍵を取り出し、自分の手錠を外す。ヒントは与えた。それでも気付かないなんて。
私たちは犠牲を払った!その犠牲は何に対して捧げられた?死ぬのはお前らの方だ!リモコンを操作すると、ドアが開く。爆弾のカウントダウンが、再び始まった。
絶叫する4人。爆音。

これを見てください。ツイッターの画面をプリントしたものですか?ええ。死ねとリプライされたアカウントのものです。
麻生…みどり?犯人である麻生空太の妹のアカウントです。2010年7月10日、14歳で亡くなっています。自殺でした。第一発見者は兄の空太だったそうです。親のいない彼らは孤児院で育てられました。唯一の肉親を失った空太の悲しみは相当なものだったでしょう。
ツイッターのリプライが自殺の引き金になったと?それだけではないでしょう。しかしリプライをしたアカウントの持ち主は、全員が妹より年上だったんですよ!顔の見えないネットでの発言は無責任で刹那的だ!
しかし犯人は狂気的ですね。怒りの感情は長続きしないんです。1年も掛けて巧妙な計画を練って復讐するなんて、密室殺人ゲームを楽しんでいたんじゃないかと思います。…なるほど、さすが刑事さん、一味違いますね。
では、私はそろそろ。田富さん、本の出版はもう少し待っていただけますか?事件の真相をはっきりさせてからにしたいんです。警察は事件の次に体裁を大切にしますから。それ、逆じゃないですか?わかりました。でもすでに出版社に渡してあるので、早めにお願いしますね。事件が明るみに出るなら僕は構いませんから。

新堂さん!有馬刑事と太田刑事が駆け込んでくる。あの文書の鑑識結果が出ました。やはり麻生空太の指紋と一致しました。筆跡は鑑定中ですが、ほぼ間違いないと。
あんなのどこで見つけたんですか?タレコミだよ。ジャーナリストだそうだ。その人、よほど証拠物件の扱いに慣れてますね!どういうことだ?検出された指紋は麻生空太のものだけでした。…封筒もか?はい。
名刺を取り出す新堂。田富功利…たどみ、こうり…みどり、こうた…?なんで気付かなかったんだ!どうしたんですか?
整形で顔は変えられても、指紋は変わらないってことだ。

傘をさした田富がみどりの墓の前に立っている。
みどり、遅くなってごめんな。お兄ちゃん、完全すぎる犯罪は事件にすらならないってこと、忘れてたよ。
バッグから本を取り出し、墓前に置く。おまえは喜ばないかもしれないけど、お兄ちゃんの処女作にして遺作だ。
空太が現れる。
「「じゃあな、みどり。また来るよ」」
空太が田富と入れ替わる。本を取り上げ、薄く笑う。

『限・界・密・室! 田富功利』

NG集!
名刺を渡す田富、受け取れない新堂。ボウガンに当たって倒れる根間。新堂の代わりに出てくる太田刑事。吉良の箱から出てくる馬の被り物。長身の平が高く挙げた紙を取ろうとジャンプする麻生。ナイフでリンゴを剥く矢内。麻生の代わりに座っている太田刑事。部屋を出て行こうとする麻生を捕まえる平。麻生に蹴りを放つ矢内。麻生がドアを開くと、太田刑事と有馬刑事が入ってくる。新堂が妙なコスプレをして歩いている。

シリアス!緊張感漂う笑い無しのストーリー。
シンプルな演出で、当事者5人は出ずっぱり。オープニングの映像と規則正しい動きはカッコ良かったなぁ。初日のオープニングに江崎さんが出て来たとき、橘さんと見間違えた。結末を予言したかのような見間違い…。
そして星屑以来のNG集。本編がボケ無しの代わりにここで取り返す人たち多数。日替わりも多かったようだ。若尾さんが馬の被り物を出したときはテンション上がったなぁ。馬メイド!

西島さんの若き社長はハマるね。場の統率力とちょっと強引な雰囲気。膨大なセリフと早口、迫力あった。
根建さんの高校生にはちょっと笑ってしまったけど、無鉄砲で無駄に強気な感じがピッタリだった。
メガネ無しの文田さんは、うつむきがちで儚げな感じが出てた。変人四条のイメージが強いけど、こういうのも似合うんだね。
江崎さんは気弱なサラリーマンと狂気の殺人者のギャップが!正義の味方っぽい役が多いけど、悪役もハマる。
若尾さんは冷たい女性の役。美人でカッコイイんだよねぇ。素敵。
橘さんはクールなジャーナリスト。でも終盤は妹を想って激昂したり、真相判明前にもさりげなく伏線があった。
中村さんはボケ無しの刑事。あの中村さんがボケないなんて!最後のコスプレに気合いが入りすぎて超早着替えだったけどw
いぬは奇抜探偵に引き続き刑事役。会場に入った途端に2人の姿を見つけて、また脇役!と思ったもんだ。劇団中村は楽しんでたよねぇ。

開演前から薄暗く、女性の不気味なアナウンスが流れていた。チラシは事件の翌日の新聞を模したもの。
セットは白一色。あの狭い舞台は閉鎖空間にピッタリだね。
終演後の帰り際、舞台に置かれた鎖を見たけど、めちゃくちゃ本格的だった。ジャラジャラ鳴る音も重厚だったし。
神保町花月でも、いろんな公演ができるんだなぁ。

コメント

  1. みるくマン より:

    神保町花月のレポ、毎回ため息が出るほど素晴らしいです。
    ありがとうございます。
    どうしても気になったシーンがあるので質問してもよろしいでしょうか。
    黒い箱を開けた根間にボーガンが飛んでくるシーン。
    どういう演出だったのでしょうか。
    まさか、本当にボーガンが飛んでくるわけないですよね。
    変な質問でごめんなさい。これからも楽しみにしています。

    1. ナオミ より:

      読んでいただきありがとうございます!
      ボウガンの演出は音だけです。出演者の目線とセリフでボウガンだと理解した感じです。

  2. みるくマン より:

    「ナオミさんのレポなら有料でも読みたい!」
    そう思っています。
    演出の件、スッキリしました!ありがとうございました。

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