神保町花月「全身と全霊とあと少し」

@神保町花月 19:00 A6

神保町花月初の試みを体感した公演。全通の成果を覚書。

絶対、イヤ!
大人気女優、吹雪レオナ(大貫)はドラマ出演の依頼に来た新人プロデューサーの生野司朗(大久保)に文句を言っていた。「HEARTFUL LIFE」の脚本は名前も聞いたことのない新人を起用。
マネージャーの沖ノ島冬二(かみちぃ)が止めるが、レオナは立ち去ってしまう。

ディレクターの山野巧(屋敷)は、台本を床に叩きつける。もっとドラマティックな脚本書けよ!新人脚本家のエリー北沢(広永)は、まだ初稿だからと弁明。止めに入った生野は、どちらの意見にも納得し優柔不断。
プロデューサーがこんなだと先が思いやられるよ、と吐き捨て山野は去っていく。

レオナの付き人である村田正夫(門田)は、情報通の沖ノ島から生野の情報を仕入れていた。芸能界に疎い生野に、レオナは日本一の女優だと力説する村田。
生野が入社以来12年担当していた子供番組に戻りたいと弱音を吐く。わかるよ、大好きなものを奪われるなんて、許せないよな。
そこへレオナと沖ノ島がやってくる。生野が頭を下げてドラマ出演を頼むが、レオナは聞き入れない。

そこをなんとか、お願いしますよレオナさん。
現れたのは、貴島誠之介(海野)。視聴率請負人と呼ばれる、伝説のフリープロデューサー。レオナと沖ノ島は、実在したんだ!と大喜び。
局長直々に「HEARTFUL LIFE」のプロデュースを依頼されました。もちろん私は裏方に徹します。エンドロールに名前が載ることはありません。
「HEARTFUL LIFE」は絶対当たりますよ。いい考えがあります。任せてください!

5人の男たちが集められている。貴島が取り仕切る、吹雪レオナの相手役オーディションの参加者たち。
岡田佐千夫(山脇)、28歳、アクションスターを目指している。
小崎弓男(嶋佐)、26歳、上がり症だが本番には強い。
町村杏一(西本)、38歳、ヤクザ映画一筋20年。
美谷耕三(田井)、22歳、役者を目指し大学を休学中。
川津悟(佐伯)、27歳、レオナの大ファン。
川津は、レオナさんを思う気持ちは誰にも負けない、演技を超えた演技、リアリティを出せると自負。俺の方がふさわしい!と乱闘になる5人。
あなたたちは無名です。見たことも聞いたこともない人たちです。そんな人が吹雪レオナの相手役にふさわしいんでしょうか?…ふさわしいんです。
世の中にはドラマがあふれている。いつも同じ出演者、視聴者はうんざりしてるんです。
オーディションを勝ち抜いた無名の俳優、しかも相手はあの吹雪レオナです。視聴者はスマホ片手にあなたを検索するでしょう。一夜にして、いや、ドラマが終わる2時間後には、あなたはスターです。
しかし、選ばれるのはたった1人。この役を得るためには、全身と全霊を傾けて、あと少しの…運ですかね。
ガーッとという音とともに、客席が明るくなる。
…この人たちは?今回、公開オーディションが行われることになりました。新しいスターを生み出すために、300倍の抽選で集められた方たちです。
ADの荒川庄平(加藤)、佐藤新(吉川)が登場。審査員たちにインタビューをしていく。
まずは、第一印象で良いと思った1人に拍手で投票。

貴島がプロデューサーなら安心だと、レオナは「HEARTFUL LIFE」への出演を決定した。
山野が台本片手に乗り込んでくる。エリー北沢が書き直した台本は、初稿よりさらに酷い展開になっていた。
貴島は生野を諭す。ドラマ作りは残酷な作業です。求められないものは切り捨て、求められるものはそれ以上のものを作る。あなたはこのドラマのトップなんです。脚本家にちゃんと命じてください。書き直せと。

オーディション組は台本片手に早口言葉の練習をしている。
町村は奥さんからの電話に文句を言っている。3人の子供がいるという町村に、カミさんに食わせてもらってるんだろ?と笑う小崎。母子家庭の岡田は、クズの父親がいなくて幸せだったと言う。美谷に同じ言葉を繰り返す口癖を指摘され、動揺した岡田は叫びながら走り去る。
あれくらいで動揺するなんて、とバカにする川津。美谷が3人を振り返る。すぐボロを出すヤツは、足元すくわれちゃいますよ。ねぇ?

エリー北沢がノートパソコンを開いて作業している。そこへやってくる生野。なかなか話しかけられずにモジモジしている。
脚本のことだけど…。ああ!あれですか、3日も徹夜して書いたのなんて初めてです。でもおかげで大満足です!ありがとうございます生野さん!…あ、ああ、こちらこそありがとう…。
レオナからの文句を伝えに、村田が入ってくる。あんな台本じゃ話にならないから書き直せって!
どういうことですか生野さん!?
そこへ貴島が入ってくる。
あなたの脚本は、スケールが大きすぎるんです。映画館のスクリーンにふさわしいんですよ。エリー北沢さん、あなたもそう思うでしょう?ドラマはベタなものでいいんです。吹雪レオナさんが主演なんですから、彼女の美しさが引き立つような悲恋ものとか。流行りの韓流とか。
金持ちのお嬢様と貧乏学生の恋、お嬢様の両親に引き裂かれる、親が決めた婚約者、身を引く貧乏学生。貴島の誘導でストーリーを作っていくエリー北沢。
身の引き方にもいろいろありますよね、視聴者が泣けるものってどういう展開でしょう。…死ぬ、とか?死ぬ!なるほど!ただ自殺するだけじゃなく、お嬢様に何か残されたりすると…。そうだ、遺書だ!遺書ですか!ずっとあなたのそばにいるよ、という文字が涙で滲んでいるんですよ!
光景を想像して泣いている生野。素晴らしいものが書けそうです!と嬉しそうにパソコンを抱えて去っていくエリー北沢。
よし、脚本は予定通りのものを書いてもらえそうだな。貴島の独り言に驚く生野。誘導したんですか!?
生野さん、ドラマ作りはプロデューサーも演じなければならないんです。脚本家に発破をかけたり、気難しい役者を動かしたり。

オーディションは山野が取り仕切っていた。審査員へアドリブで告白をする演技。
そこへ貴島がやってくる。役者たちは役作りをするために、恋人役の写真を部屋に貼ったり、ホームレス役ならブルーシートに寝泊まりしたり、自殺する役なら自分の人生を見つめ直して遺書を書いてみたり。
貴島の一言一言に驚く5人。そうだ、遺書で思い出しました。みなさんの役は、レオナさんと恋に落ち彼女の幸せのために身を引き自ら命を断つというものです。
良い役だと喜ぶ5人。役作りは簡単なものではありませんよ。この役を得ようと思うなら、今から役になりきる努力をしてください!

旦那がゲイだと知り離婚届に判子を押させようと電話をしているレオナ。沖ノ島に、良い離婚理由がないかと文句を言う。世間から同情されるような、むしろ女っぷりを上げるような、そんな理由を!

オーディション。喜怒哀楽を表情だけで演じさせている山野。何かが足りない、と審査員からシチュエーションのお題をもらい、即興でリアクションのエチュードを行う。
そこへレオナと貴島が入ってくる。山野を押しのけて前に出る川津。
レオナから、私を慰めてください、というお題が出される。
川津、好きな人が目の前にいるのに何もできない…いや、できる!とレオナに抱きつく。
町村、幼なじみという設定で自分の奥さんと子供の愚痴を言う。
美谷、美谷医院の三男で実家は大金持ち。金で解決しようか?でも役者をやると言ったら仕送り止められちゃって…。そうだ、幸せの壺を買わないか?
小崎、頭に浮かんだ言葉を大声で叫ぶと悩みは吹き飛ぶよ!
岡田、好きな人を思い浮かべるんだ。その人を幸せにしたいだろう?俺、頑張るよ。母ちゃん…。絶対この役を手に入れるから!
俺だってこの役をやりたい!俺の方がふさわしい!と乱闘になる5人。遠巻きに見ているレオナと山野。
貴島は、5人を見てニヤリと笑っていた。

最終審査。ここで審査員の拍手によって選ばれた1人が、レオナと共演できる。
選ばれた1人はその場で貴島から契約書をもらい、もう死んでもいいです!と嬉しそうに笑う。死んでもいいだなんて、撮影はこれからですよ。
選ばれなかった4人は、選ばれた人物を恨めしそうに睨む。
町村、なんであいつが主役なんだよ。俺の方が絶対上手いに決まってる。あいつ…許せねぇ。
美谷、まだ終わったわけじゃない。どうすれば僕が選ばれるのか、考えるんだ。あんな奴に良い思いされるなら死んだ方がマシだ。
小崎、あいつだけは絶対無いと思ってたのに。あんな胸くそ悪い顔がテレビに映るなんて、絶対イヤだからな。
川津、レオナちゃん…レオナちゃんと共演できると思ってたのに。僕のレオナちゃんがあいつに取られちゃう。どうにかしないと。
岡田、母ちゃんごめん、また落ちた。あんな奴に役奪われた。あいつの嬉しそうな顔、なんだよ。

ADたちは、オーディション合格者がどんどん演技力を上げているとウワサしている。レオナさんも今ものすごく役に入り込んでるよ。あの2人良い感じだよな?もしかして付き合ったりしてるんじゃ?
生野が話しかけようとするが、2人は無視し続ける。
ここまで上手くいってるの、貴島さんのおかげだよな!ずっと貴島さんがプロデューサーならいいのにな。
落ち込む生野のもとへ、村田がやってくる。オーディション合格者に対して文句を言っている。俺だって応募したかったよ、でも関係者はダメだって。俺決めた。もう誰もレオナちゃんに近付けさせない。近寄る奴はタダじゃおかん、ってな。
撮影は順調ですよ、プロデューサー。貴島がやってくる。私、ドラマ向いてないんです。苦しいんです。どうしたらあなたのようにできるんでしょうか。
僕のようにじゃダメなんですよ。全身全霊で戦ってようやく絞り出した一滴、それがオリジナリティだ。あんた今まで戦ってきたのか?負けてきたのか?俺は何度も負けてきた。もう二度と自分に負けないと誓ったんだ。全身全霊で戦ってる奴らより、ほんの少しだけ頑張る。そのほんの少しがあるかないかで勝負は決まるんだよ!
貴島に担当番組を揶揄され、バカにするな!と怒鳴る生野。それだよ、生野さん、あんたに足りないのは愛だ。あんたは「HEARTFUL LIFE」のトップで、一番強い人なんだ。一番強い人は、一番優しくなくちゃいけない。
「HEARTFUL LIFE」にも、愛を示せよ。

何回NG出せば気が済むんだよ!山野がオーディション合格者を怒鳴りつけている。次は最後のシーンだぞ、次ちゃんとやらなかったら全部ぶち壊しだからな!
生野が声を掛ける。演技力を上げてきたと評判ですよ。あと少しでゴールです。オンエア後、きっとあなたはスターになってますから。

君とはもう会わないことにした。ハルキ(オーディション合格者)はマチコ(吹雪レオナ)に伝える。お願いハルキさん、一緒に逃げて!
他に好きな人ができたんだ。ウソよ、あたし、信じないから。ハルキさんのこと、待ち続けるから!
待っちゃダメだ。俺といたら、君は幸せになれない。マチコさん、さよなら。取り出した瓶の中身を飲み干す。
苦しそうに喉を押さえ、倒れる。
…なんで、嫌だ、死にたくない、死にたく…ない…。
カット!山野の声が響く。

――ドラマの出演者が収録中に自殺したんだって。
――悩んでたらしいよ。遺書が見付かったんだって。
――誰かに恨まれてたんじゃない?

記者会見。山野、レオナ、生野が座っている。
――自殺の原因はやはりお2人の恋愛問題ですか!?
記者の皆さん、すべて私がお答えします。このたび、オーディション合格者が撮影中、自ら命を断ったことについては誠に遺憾です。
彼が役作りに全身全霊を傾けていたことについては間違いございません。よって、彼のファンの皆様、関係者の方への思い出として、「HEARTFUL LIFE」をオンエアすることを決定いたしました。もちろん、プライバシーに配慮して絶命したシーンはカットいたしますが。

自殺の原因が自分だと落ち込む山野。それをなだめる生野。かなり厳しく当たってたから、取り返しの付かないことをしてしまった…。君は何も悪くないよ。君は良いドラマを作ろうと頑張っていただけなんだから。仕事が残ってるだろう?ありがとうございます!俺、生野さんのために、もっともっと頑張ります!
沖ノ島がレオナを連れてくる。レオナがお礼を言いたいと。あんな記者会見初めてで、何と答えていいのかわからなくて…。助けていただいてありがとうございました。今日はもう帰って、ゆっくり休んでください。

ポスターを貼っているAD。死んじゃったのはビックリしましたけど、結果的に良い宣伝になりましたね。リアル自殺だもんな。そんなドラマ絶対見るだろ。そういえば僕、撮影中にスマホで動画撮っちゃいましたよ。
そこへ貴島がやってきて、新しいデザインのポスターを渡す。
貼り直したポスターは、同じデザインだった。綴りが違うことに気付く佐藤。
生野がやってくる。新しいポスターには、「HURTFUL LIFE」と書かれていた。これって…傷付けるとか酷いとかいう意味の?
――ドラマ作りは残酷な作業です。求められないものは切り捨て、求められるものはそれ以上のものを作る。
――ほんの少しだけ頑張る。そのほんの少しがあるかないかで勝負は決まるんだよ!
まさか…。

貴島が局長と電話をしている。
「HURTFUL LIFE」は絶対当たりますよ。全身全霊で戦って、ほんの少しのアイデアを足しましたから。
取り出した瓶をテーブルに置く。
これからもやりますよ。任せてください。どんなドラマでも大ヒットさせてみせます。

生野の人間的な成長物語、かと思いきや、すべては貴島の手の中。
真相を知った生野はどうするんでしょうね。一夜にして大ヒットドラマを生み出した新人プロデューサーとして祭り上げられて、いろんなウワサや憶測が飛び交って、さらに有名になって。
オーディション組の他の4人は、遺書の経緯を知っているだけに貴島を疑うけど、自分にも動機があるから疑われそうで言い出せない。
ADたちはあとで動画を見返して、自殺じゃないと気付くんでしょう。クビ覚悟で流出させるかもみ消されるか。
あれこれ考えるとキリがない。

各公演の、リアクションエチュードのお題、オーディション合格者は以下の通り。リピーターの力を思い知るがいい。毎公演の客数は少ないものの、全員の演技を見たいという思惑が一致した結果がこれ。
22日:自分の部屋に知らない人がいた・山脇
23日1:全財産を無くした・佐伯
23日2:大きな桜を見付けた・西本
24日1:体育館が爆発した・嶋佐
24日2:犬が電柱に当たった・田井
25日:海でクラゲに刺された・山脇
26日:部屋が火事になった・佐伯

千秋楽は佐伯さんが選ばれた。死んでもいい、というセリフが一番似合うのは川津だと思う。彼だけは役者をやりたいのではなく、レオナに近付きたいという願望のみ。役者になりたい4人が、唯一ホンモノの素人が選ばれてしまったことを恨む。最も筋が通ったストーリーになるのは川津かな。
声にならない呼気と苦しげながらもハッキリ聞こえる最期の言葉、ゴトンと息絶え腕がだらんと落ちる姿は迫真の演技。

オープニングがカッコイイ。可愛くポーズを決めるレオナ、レオナに怒られる沖ノ島、うなだれる生野、生野を怒る山野、ケンカになる岡田と小崎と町村を止めようとして譲り合う美谷と川津、エリー北沢と村田を案内する荒川と佐藤、無表情の貴島。

セットの転換要員はAD2人。ときには山野ディレクターに怒られながらの作業。舞台上、舞台裏、客席、縦横無尽に動き回って、実は一番の立役者。お客さんの回答を面白く変える力も要求される。17期2人、頑張ってたし面白かった!
オーディションでは、屋敷さんのツッコミスキルが全開になった。世界観、サブカルといじられまくる田井さん。たまに佐伯さんも餌食に。相方には甘いようで、嶋佐さんのときは最初からニヤニヤしている。山脇さんには努力しろと冷たい。西本さんはよく笑ってたかな。
やさしいズの発想力と演技力が浮き彫りに。エチュードでは毎公演ウケていた。周りが笑ってても表情がまったく変わらない佐伯さん、オタクっぷりが似合う甲高い声と超早口。素に戻らず美谷のままで笑ったり怒ったりする田井さん、他人をバカにした雰囲気と華やかな見た目。脚本の丸山さんの評価も高くて嬉しい。
セット扱いの2人は、同じセリフや動作が被って譲り合うという設定で、じゃあ僕が、どうぞどうぞ、と穏やかなやり取りが何度も繰り返された。コントでもなかなか見られない姿で楽しかった。公開オーディションだと知った小崎を両側から助け起こすシーンが大好き。どうぞどうぞ、と譲り合って手を離してしまうw
記者会見の記者の声に佐伯さんが参加していたはず。3人目の恋愛問題ですか!?と言っていた人。というか出演者たちがやっていたと思うんだけど、佐伯さんしかわからなかった。あの声が大好きなんだよね。

丸山作品に登場した人物が、声や名前で出演。ソフトタッチ葉桜がまた聞けるとはね。
紅十、白州紅子&村崎市之介。
星・屑、葉桜葉&文谷俊彦、如月圭吾&横森メイ子、パク・ヨンチョル。
サムシング・ワァオ!、吹雪レオナ&シュー川島。
ピースでござる、吹雪ニイナ。

演出のおかげで、他の公演より演者とお客さんの距離が近かったと思う。人数の少なさもあいまって、とてもアットホームだった。
インタビュー2回受けたし、キャンペーンのパンフも貰ったし、なにより全公演見たし、最大限に楽しんだ!
出演者のみなさん、お客さん…いや、審査員のみなさん、お疲れさまでした!

[LOVE MATHEMATICS – Base Ball Bear]

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