神保町花月「雨プラネット砂ハート」

@神保町花月 16:00 C10

ライス班千秋楽。
ついに終わってしまった。ネタバレ解禁!

コウイチ(田所さん)のシーンから、ストーリーは始まる。背後の窓には、大きく「雨」の文字が映し出されている。
床にひざを付き、何かを抱えるようなしぐさ。「なんで、なんでこんなことに…僕は忘れませんから!」両手が何かをつかみ、グッと力を入れた。「ちくしょう…」横に置いてあったポリタンクの中身を床に撒き、マッチで火を着ける。辛そうな顔でじっと床を見つめる。
アンゴ(関町さん)の呼びかけで目覚めたコウイチ、アンゴに顔色が悪いと指摘されるが、そ知らぬふりでごまかしている。次の大人候補を問い詰められ、ある人物の名を紙に書いてアンゴに見せた。
シーンは変わり、机や食器の準備をする子供たち。大人たちとは違う部屋で、子供たち5人で共同生活をしているらしい。子供部屋には、窓が無かった。しかしいつも鳴り続けている雨の音。
ストーリーテラーのカイ(児玉さん)、おとなしく真面目なガク(向坂さん)、紅一点のリョウコ(京本さん)、リョウコとカイの仲をからかうナオト(松橋さん)、いつも明るいタイキ(赤羽さん)。そして大人のシュージ(久松さん)が料理を持って入ってくる。
何かとコウイチに絡むカイ。決められたルールもろくに守らず、カイに辛く当たるコウイチを、カイは嫌っていた。シュージが大人になる直前、シュージから自分の母親がここにいたこと、そしてコウイチに殺されたことを聞かされていたからだ。
次の大人がガクだと聞かされた数日後、カイはみんなに脱出計画を持ちかけた。2種類の鍵で隔離された子供部屋から出るためには、大人になったガクが鍵を受け取った瞬間にしかチャンスが無い。
ガクが大人になる日の直前、東京に向かうと言うコウイチは、アンゴとシュージに見送られ部屋を出て行った。コウイチが出て行った瞬間、泣き崩れるシュージ。
そしてガクが大人になる日。ガクが鍵を受け取って部屋を出ようとした瞬間、リョウコが持っていた袋をシュージの頭にかぶせ、鍵を奪い取った。2種類の鍵を手に入れ、大人たちの部屋へと向かう子供たち。
大人の部屋には、窓があった。アンゴが止めに入るが、カイとタイキが窓を開けてしまう。
「砂」の文字が、映し出される。
何かのスイッチを切るアンゴ。鳴り続けていた雨の音が、止んだ。
降り続いていると説明されてきた雨の音が止んだこと、窓の外に見える景色が本で読んだものと違いすぎること、コウイチがここにいないこと、疑問を持つ子供たちにアンゴが説明を始めた。
18年前、この星に隕石が衝突し、付着していたウィルスのせいで人間のほとんどが死滅。外は砂漠化。彼らが暮らしている場所はシェルターだった。
食事を取らなかったり風呂に入らなかったりとルールを守らないコウイチの行動は、子供たちがシェルターでの生活に不自由しないよう、自分を犠牲にしてまでも子供たちを守っていた結果だった。
カイの母親であるナナミは、子供たちの夜鳴きを止めるために使った雨の音を、過酷な環境に耐えられる大人になるまで聞かせ続けることを提案していた。しかしナナミの身体は、ウィルスに侵されていた。遺体を感染源として拡散するウィルスを断絶するため、ナナミはコウイチに自分を殺してくれと頼んでいた。
アンゴはカイに、コウイチから託された手紙を渡した。そこには、子供たちに対する励ましの言葉、そして自分の身体がウィルスに侵されていることが書かれていた。
本物の雨が、降り出した。
そして数年後。
コウイチの行方を追うため、カイは旅に出ようとしていた。リョウコは赤ちゃんを抱えている。父親は、ナオトだった。
カイがアンゴに促され、出発前の一言を言おうとしていたとき、足音が聞こえてきた。みんなが指差す方向を見ると…。
「誰を探しに行くって?」

長くなった!書きながらまた思い出して泣いてしまった。本当に良い話!ちょっとしたSF短編小説としても良く出来ていると思う。
特にライス2人と児玉さんの役が重要で、コウイチとカイのケンカ腰のやり取りは本当にハラハラするくらい怒号の応酬で怖かった。優しく柔らかな物腰の役だった関町さんも、コウイチを心配して怒鳴るシーンは泣けた。カイがコウイチの文句を言っているときのシュージの悲しそうな表情!久松さんの演技も良くて、彼のシーンでも泣けた。
シュージがコウイチを見送って泣き崩れるところ、初日は後になって意味がわかったけど、ストーリーを知ってから見ると泣けて仕方ないシーン。コウイチが笑顔で出て行くんだよ!どんな想いで手紙を書いて、どんな想いで出て行ったのか…。全部知ってるはずのアンゴが、笑顔でコウイチを見送ってるのも泣ける。
カイの心境の変化とか、消極的なガクの精神的な成長とか、いろんなテーマが絡み合って、ストーリーの厚みが素晴らしかった。
コウイチの手紙、あれは泣けた。子供たちにとっては悪役なのに、アンゴやシュージには笑顔で接していて違和感を抱いていたんだけど、その理由が手紙で全部わかる。ただ不器用で優しい人だったんだねぇ。

演出は、今までの神保町花月では見たことの無いものばかり。
オープニングのタイトルは、子供部屋の壁際に立つカイの胸元に1文字ずつ映し出された。景色の表現は「雨」「砂」の2文字のみ。そして本物の雨が降ったシーンでは「雨」の文字が本当の雨のように舞台いっぱいに降り注いだ。
コウイチがラストに帰ってくるシーン、本人は出てこないけど、スポットライトが舞台袖に向かって当てられ、平沢進「MOTHER」が流れる。初日はここでもみんな泣いていた。

さて、感動的なラストの後にエンディングで出てくる田所さん、どうやら3日目から衣装を変えて出てきていたようで。初日は出て行ったときと同じ服装だったんだけどね。
4日目は、タンクトップにホットパンツ。千秋楽はピンクのハイヒール、緑のタイツ、グレーのミニスカートというかエプロン?、クリーム色の肩の開いたカットソー、ピンクのベレー帽。メイクはしてないものの、女装。本人も言ってたけど意外と違和感なかった。関町さんには木村カエラと紹介されていたw
関町さんと久松さんは、ガクが大人になるお祝いと称して毎回いろんな衣装や小道具を持って登場してたけど、今日はドライアイスを炊いて出てきた。向坂さんにドライアイス発注したでしょ!と詰め寄られ、2人で渋谷で待ち合わせてサーティワンでもらってきたことを告白。スタッフさん任せじゃなくて自分たちで考えてやってるんだね…。

昨日は赤羽さんが体調不良で2回目に出演しなかったらしく、今日もあまり調子は良くなさそうだった。赤羽さんだけの長いくだりを短くしていたり、赤羽さんを笑わせていた田所さんが真面目にやってたり、体調を気遣いつつも初見の人にはわからないような感じで進めていた。その代わり、児玉さんと松橋さん2人のくだりが長くなってたり。プロだねぇ。

脚本も演出も出演者も大好きな作品だった。全公演見たかった。連日超満員で、パイプ椅子で簡易座席が作られていたほど。
5月にもライス主演があるから、楽しみにしていよう!

[MOTHER – 平沢進]

コメント

  1. めぐみ より:

    私は昨日の一回目と今日見に行きました!
    昨日は手紙のシーンしか泣きませんでしたが今日は怒鳴る関町さんとかコウイチが出て行くシーンもですしOPの時点でうるうるでした笑
    演出にはびっくりですよね。カイにタイトル映したのには鳥肌がたちました。セレーサの人でしたっけ?
    ライス主演はテンプテーションが初でしたが「宇宙でクロール」も杉田さん演出好きなんで見てみたかったですー。
    ライスの次回の主演早すぎませんかね笑?絶対行きますけど。
    長文失礼しましたー!

    1. ナオミ より:

      ストーリーがわかってから見ると、泣けるポイントが増えますよね!私はシュージの表情でウルウルしてました。
      演出凄かったですよねぇ。セレーサの演出の方、手元のメモには間拓哉さんとなっているのですが、同じ方なんでしょうか?
      ライス主演、間隔が狭いですよね。ファンとしては嬉しいけど稽古が大変そうなのでちょっと心配です。行きますけどね!

  2. 奈西 より:

    レポありがとうございます。思い出しただけで泣けてきました…。
    初日しか見ていないのですが、分かってからはOPから泣いてしまいますね、きっと。
    大人も子供も誰が正しい、誰が間違ってる、と判断出来ないところが切なかったです。
    憎むにしても許すにしても、相手がいないと成り立たない。コウイチの「忘れませんから」という台詞も重たいなぁと思いましたし、どちらにも近いショーゴも切なかった。大人も子供も引っくるめて包み込むような優しさのアンゴが素敵でした。
    ラストシーンの演出が最高でしたね。救いが見えて、号泣でした。
    長々と失礼しました。
    来月のライス班にもきっと行ってしまいます(笑)

    1. ナオミ より:

      何回見ても良い舞台でした。未だに思い出して泣けますw
      各キャラのセリフや演出も良かったですよねぇ。
      コウイチが帰ってくるのはお約束だとは思いましたが、あんな演出にされたら号泣です。
      来月はゴージャス村上さんの脚本なので、きっと笑える舞台だと思いますよ!

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