@神保町花月 16:00 C6
千秋楽終演。長谷川ワールドを簡単に覚書。
樹海で遭難した男(中須)。穴を掘る男たち(長谷川/椎橋)。車に乗る男女(佐藤/桑原/児玉)。テーブルを拭く男(川口)。さまよう男(林)。
自分のような人間は夢も希望も持ってはいけない、そう思い樹海へ自殺しに来たイクマ(林)。
ネットの自殺サークルで出会い自殺しに来た、首にロープを巻いた沢村(桑原)、飯塚(佐藤)、ルミ(児玉)。
イクマに遭遇した3人。沢村は樹海の主かと警戒する。俺は地底人と戦ったこともあるんだぞ!
樹海の中で樹カフェを運営するノブ(川口)は、死ぬ前に一杯のコーヒーを出してくれた。お代は死体の遺留品。ハイエナじゃないか、と吐き捨てるイクマ。マラソンは完走すればどんなに遅くてもタイムは出る、しかしリタイアすれば成績は何も残らない。
たまに入るラジオでは、一家殺害の容疑者を追うニュースが流れていた。
ノブ特製のキノコスープを飲むイクマ。頭を押さえ、うずくまる。イクマが目を開けると、全員が頭にキノコを生やしていた。妙なテンションで明るく自殺の原因を語る3人。なんか楽しくなってきちゃった!自らをなめたけたろうと名乗るイクマ。再び目を開けたイクマは正気に戻っていた。なめたけくん?なんだよなめたけって!俺はイクマだ!
4人はノブの勧めで自殺の原因を語る。沢村はリストラされ奥さんに逃げられ飼い犬に手を噛まれる始末。飯塚は妻をガンで亡くし何もしてやれなかった自分は死んだ方がマシだと言う。ルミは幼い頃に父を亡くし、母は先日自殺をした。イクマは幼い頃に両親に捨てられ孤児院育ち。勤めた会社では盗んでもいない金を盗んだと言われ喧嘩になった相手を不慮の事故で死なせてしまった。哀れまれることを極端に嫌うイクマ。
イクマは世界を旅するカメラマン、岸辺(中須)と遭遇する。光る宝を探しに樹海までやってきた。関西弁で喋る男は、待っている人のためにも絶対に生きると言い張る。生きてさえいれば何かいいことがあるはずや。
樹カフェの側に現れた白装束の2人。自らを神の使いだと言う宇田川(長谷川)は、小笠原(椎橋)に穴を掘るよう指示する。自首しましょう先生。何を言っているんだ、神のお告げに従っただけなのに何故自首しなければならないんだ。
小笠原くん、君、家族がどうなってもいいのかい?小笠原くんが裏切るかもしれないというお告げがあってね。僕はなんでもしますから家族だけには手を出さないでください!
君、コマムラ代表と身長体重血液型が一緒だったね。神の生贄になってもらうよ。
どんなに歩きまわっても樹カフェのある場所へと戻ってきてしまう4人。
そこへ血まみれの小笠原が助けを求めてきた。斧を持った宇田川は、コマムラ代表の身代わりになれと斧を振り回す。
俺から殺せというイクマに斧を振り下ろそうとする宇田川を止める飯塚。飯塚は2人が今話題のカルト教信者だと見抜く。教団員とその家族を殺害し逃亡中の代表の名前がコマムラだったな。
僕は絶対に生きる!と逃げまわる小笠原。それを庇うルミ。飯塚は宇田川に銃を向けた。どうせオモチャだろ?…試してみるか?
沢村が首に巻いていたロープが役に立った。
飯塚は刑事だった。一家殺害事件の捜査をしに?というノブの質問に首を振る。自殺しようとしたのは本当です。これはたまたま。
愛する人を守れなかったと泣く飯塚に、私を守ってくれたじゃない、とルミが言う。私、自殺するの止めた。飯塚さんが守ってくれた命、大切にしたいから。飯塚さんも自殺止めよう?奥さんを守れなかった分、みんなを守るべきだよ。こんな正義感強い人他にいないよ。
やっぱり自殺ごっこじゃねぇかよ。イクマは1人苦い顔をしている。
小笠原の言葉を聞き、父親を思い出したというルミ。ワシは絶対に死なん、おまえたちのために生きて帰るんやと言っていた、世界を旅するカメラマン。樹海を旅する間に失踪してしまった父親。どうせ死ぬなら父の近くが良いと自分も樹海で自殺しようと思った。ノブさん、6年くらいまえに関西弁のカメラマンが来ませんでしたか?…関西弁のカメラマン?イクマはハッとする。
ノブは遺留品の中からカメラと手紙を持ってくる。お父さんのカメラだ…!妻のさやかと娘のルミに宛てた手紙だった。
岸辺が出てくる。その姿はイクマにしか見えていないようだ。ルミ、すまん。娘の側で土下座する岸辺。イクマに向かって声を掛ける。生きたくても生きられない人がいるとかは言わん、ただ、死ぬのはいつでもできるやろ。もう少し生きてみろ。不幸の大きさは人それぞれ、幸せの大きさも人それぞれや。大切な人を見つけて幸せな家庭を築いてみろ。大切な人ってなんだよ。命がけで守りたい人。失いたくない人。大切な人を見つける権利はおまえにもある。
いいものを見せてやる、とノブがライトを消す。あたり一面を照らす光が現れる。
椎の灯火茸。朽ち果てた椎の木から生えるキノコ。学名は天国の光。岸辺は辺りを見回して笑う。光る宝や!父のカメラを構えるルミ。辺りの写真を撮る。ファインダー越しに、岸辺の姿を捉える。…お父さん…!?
――光るキノコを見ながら、朽ちる前に光るのも悪くないと思った。光の中で、始まりが俺たちを待っている。
3年後。
イクマは電話でプロポーズしている。小笠原の出所に付き添う飯塚。小笠原は迎えに来た家族に、今度は必ず幸せにすると語りかける。ルミはカメラマンになっていた。イクマのプロポーズは玉砕。付き合って2日でプロポーズは早すぎたか…。
沢村は生きる気力を取り戻していた。しかし…。
置いてかれた!!!
樹海に取り残された沢村。ノブは宇田川のことを警察に言わない代償に樹カフェで働かせていた。沢村にぶつかる岸辺。しかし沢村には姿は見えていない。娘との感動の再会、これで成仏できなかったらもう無理やな…。通り過ぎる岸辺に手を合わせるノブと宇田川。
1人取り残された沢村。樹海なんてもうこりごり!
重いテーマを美しく恐ろしくポップに表現した長谷川さん脚本、素晴らしい!キノコに汚染されたあのくだりはなんだったんだw
オープニングの曲がとても綺麗だった。女性が歌っている英語の曲ということしかわからず。気になる!
前作の深々に登場した自殺志願者、沢村が再び登場。首にロープを巻いているあの姿は健在。地底から脱出できたのか…。生き延びたのにまた自殺しに来てるあたりがもう。暗い設定のはずなのになんだか笑ってしまう。
佐藤さんがめずらしくセリフの多いカッコイイ役で良かった。いつもギャラ泥棒と言われてしまうくらいセリフが少ないらしいから。せっかく上手いんだからいい役をやって欲しいね。椎橋さんは修行のボケっぷりと殺されかけの迫真の演技のギャップが凄い。彼の声は悲壮感出るよね。
キノコのくだりでふざけ倒す林さん、楽しそうだったねぇ。初日は1時間20分だった公演が、千秋楽では2時間にまで延びていた。林さんの1人舞台と中須さんとの掛け合いでプラス30分だね!
「椎の灯火茸」は実在するキノコだというのが驚き。「天国の光」という学名も本当だとは。ロマンだねぇ。
次回作は沢村スピンオフが見たいなぁ。不幸なのに何故か運が良い…気になるキャラクターだ。