第9回クレオパトラ単独公演「ワンダーネバーワールド」

@博品館劇場 19:00 A22

いつも通り、黒尽くめのボヨンボヨンの前説からスタート。

時計の音。
黒尽くめの男(ゲッツ)が佇んでいる。ようこそワンダーネバーワールドの世界へ。この物語は、永遠を生きる人々のお話です。
舞い踊り始める黒尽くめの男。

ラブラブな夫婦は今日も「愛してる!」と言葉を掛け合う。いつも通り部屋に入ってくるダンサー、いつも通りの夫婦喧嘩、いつも通りのカレー、いつも通りの隠し味。80年間ずっとずっと、同じ毎日の繰り返し。
しかし夫(桑原)は、今日だけは変化を付けてみたくなる。いつも通りでいいじゃないと言う妻(長谷川)。

白田(桑原)と小渕(長谷川)は、歌と尺八で路上ミュージシャンを続けている。80年間まったく売れる兆しはない。今日も誰も足を止めない。
おまえだけメジャーデビューが決まったらどうする?白田は1回は断るけど結局俺だけデビューすると言う。裏切り者!しまったこれ全部妄想だった!

手を挙げている銀行マン(桑原)。このカバンに金を詰めろ!と脅すおじいさん(長谷川)。もう、普通に来てくださいよ社長!80年もずっと!いいじゃないか、これがワシの楽しみなんじゃ。
社長は大富豪なんでしょ?5万ください。やらん!代わりに仕事を増やしてやろう。金貨4枚がおまえの給料だとするだろ?2つ仕事を増やしたら、金貨を2枚ずつやろう。そして銀行は0枚じゃ。…それ結局金貨4枚じゃないですか!

永遠の美を追求し続ける加藤姉妹の姉(長谷川)と妹のミキ(桑原)。丸い鏡で自分の顔を見て満足気な姉。80年間豊胸手術をし続けているのでZカップある姉。
美を怠っていると怒られるミキ。いけない、ミキさんが暴走し始めたわ!Zカップで攻撃し沈静化させる姉。私は何を…?あなたホント双子の姉にソックリね。え?なんでもないわ。ボーイハント行く?ええ!美しいオカマも、楽じゃないわね。

宝であるカバンを盗まれないよう警護する銭岳(桑原)と、盗みに来てはすぐに返してくれる怪盗ヌパン(長谷川)。何故か始まるラグビー。ボールの代わりに宝のカバン。
実はヌパンだと思っていた男は銭岳の仕事ぶりを監視していた警部だった。そして銭岳の正体こそが怪盗ヌパン。遅刻してきた本物の銭岳(長谷川)は、いつも宝を盗られている。でも返しに来てくれるんだよなぁ。ヌパン、いつものやるか!とっつぁん!

ひどく怯えている磯山(桑原)。磯山ー野球しようぜー!長島(長谷川)が入ってくると、磯山はひたすら逃げ惑う。80年間ずっと野球野球野球。どんな球種でも投げられるようになったよ…。
車で逃げる磯山を走って追う長島。あいつの持つバットが小さく見える…!道路に叩きつけられても起き上がって追ってくる。フロントガラスに貼り付いたまま激突しても立ち上がる。ついに気絶した磯山に向かってボールを投げ続ける長島。磯山ー野球しようぜー!

少年(長谷川)は、山の上に住み鐘を鳴らし続ける妖怪、鐘爺(マンボウやしろ)のところへ遊びに来ていた。鐘爺は何歳なの?人の言葉は喋らないが、意思疎通は出来る鐘爺。どうやら80歳。
この世界終わるんだよ。僕の永遠の孤独も終わり。鐘爺の役割も終わり。隕石が落ちてくるんだ。
そこへ、いつも通りじゃないことを求めて男(桑原)がやってきた。少年は、男にもこの世界が終わることを伝える。嘘だ!いつも通りの毎日が来るはずだ。ずっと、永遠に。
鐘爺が鐘を鳴らす。今の鐘の音、夢の中で聞いた気がする…?そうだ、いつも通り家に帰れば、いつも通り妻が作るカレーを食べて、いつも通り…。

雨音。
路上ミュージシャンは今日も歌う。小渕にだけメジャーデビューの話が来た。おまえ昔とは変わっちまっただろ!?練習もしないし、もう一緒にはやっていけないよ。
――地割れが起きる。流される小渕。
銀行マンと社長はいつものやり取り。じゃあ5万ください。やるわけないだろ!
――地割れが起きる。今ワシは船を作ってる!それに乗れば大丈夫だから!俺、この銀行で働けて幸せでしたー!ああー!
待ってお姉さま、着いてこないでミキさん!あなたの美しさが憎いのよ!
――地割れが起きる。流されるミキ。
崖に追い詰められたヌパン。銭岳はついに逮捕だと息巻いている。
――地割れが起きる。落ちそうになるヌパンの腕を掴む銭岳。銭岳に催涙スプレーを吹きかけ落ちていくヌパン。
早く家に帰らないと、また長島のヤツが待ってるからな。磯山の家のインターフォンを押している長島。
――地割れが起きる。流される長島。ああー!長島ー!
帰宅した夫を迎える、産まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえる妻。しかし夫はそれどころじゃないと相手にしない。
――地割れが起きる。地殻変動がもう起きるなんて!ねえ、愛してるって言って?それどころじゃないだろ!?妻が地割れに飲み込まれる。子供だけを夫に託す妻。この子の成長を見守ってあげて!そんな!愛してる、愛してる!うわぁー!!!

妻を探して彷徨う男。少年は再び男の前に現れる。永遠に続くものなんてないんだよ。
雨が降らなくなった世界で、雨を降らせる装置を開発した科学者は、政府の陰謀で毒の雨を世界中に降らせてしまった。それ以来、雨は止まなくなってしまったんだ。
…雨?その雨とやらが降り止まない世界ってのはどこにあるんだ!?
少年がシャッターを開ける。
雨音。
ここだよ。偽物の空をずっと見ていたんだ。
科学者の息子もまた科学者で、地殻変動を予測していた。そして世界が水に沈むと。科学者は移住を考えた。不老不死の薬を作り上げ、水に沈まない島を見つけ、世界を作った。
ここにいる人々は、科学者の知り合いの大富豪が作った船に乗ってやってきた。幸せだった時間を永遠に続けるために、鐘の音で催眠を掛け続けて。時間を知らせるため、この世界を一定の動きで回り続けるダンサー、そして鐘を鳴らし続ける男。どちらもロボット。あんたたち科学者夫婦が作ったんだ。
しかし、鐘が劣化し音色が変わってきた。それにより、違和感を感じる人が出てきてしまった。
ダンサーの持つ鏡、バッグに入っていた、4枚の金貨、バット、尺八。それらを組み合わせて出来上がったのは、時計。
いつも通りではない記憶を呼び起こされる人々。

少年は、科学者の息子だった。
父さんは僕の産まれたあとではなく、母さんと2人だけの想い出を選んだ。僕は偽物の世界で永遠の孤独を生き続けたんだ。
うずくまったまま動かなくなった少年。
おい、どうした!?
こいつはロボットだよ。鐘爺が喋り始める。
こいつこそが、鐘を鳴らすために作られたロボットだ。あんたが最初に作ったロボットだって言ってたよ。でも。何かの拍子に自分をあんたの本当の息子だと思い込むようになってしまった。
だから仕方なく、ワシが鐘を鳴らし始めた。
それじゃあ…。
ワシが本当のあんたの息子だよ。誰も自分を知らない世界で生きてきた。
そういえば、不老不死の薬を全員に飲ませて成長を止めたけど、産まれたばかりの赤ん坊の成長を止めるのはどうかと思って躊躇して…結局飲ませなかった。
鐘を鳴らさなければ催眠は解けてみんな一緒に暮らせたのに!
怖かったんだ!あんたにワシの記憶はない。ワシが息子だと認識されないことが怖かった。
永遠の世界で1人老いていく自分。何度もあんたを恨んだよ。でも、成長した姿を見てもらえて良かった…!

赤ん坊を抱いた妻と夫。今が一番愛してる。俺もだよ。
父さん、母さん、未来を恐れず産んでくれてありがとう!

ちょっと待って、隕石ちっちゃ!!!

メルヘンパラソル夕日論の後日談なのかな。こちらはタイムマシンではなく方舟で箱庭。
隕石とかカバンとかで零の日を思い出したし、クレパトと箱は白、ゲッツさんとやしろさんと小道具は黒で統一された衣装は色彩オーケストラを思い出した。
暴走する妹のところ、双子の姉にソックリって絶対言ってた。あれはメルヘンパラソルに出てきたファッションデザイナーの妹のことかい?同じように暴走してたしね。
幸せだった時間を繰り返してるはずなのに、磯山だけなんか違う。ホラー映画じゃん。怖いよ。あれ幸せなの?一番笑ったのもあれだけど。

幕間はゲッツさんのダンス…というか舞い。クレパトに絡んだり絡まれたり。微妙に前のコントとリンクした動きをしていたようなしていないような…。とにかく幻想的で美しくて、力強いダンスだった。
やしろさんは仕事の関係で本番開始後に到着したとか。誰とも合わせられなくてソワソワしていた。妖怪っぷりも怒涛の感情表現もさすが。お見事。最後のセリフは良かったねぇ。産んでくれてありがとう。
時計の影絵の演出はステキ。あれをもっと大仕掛でやりたかったのかなぁ。小道具が全部集まってひとつになるって、良い演出だと思う。ハッとなった。
オープニングとエンディングの映像も素晴らしい。あれ長谷川さんが作ったの?舞台の作り込みがどんどん自分たちだけで完結出来るようになってきてるな。特にオープニングが綺麗だったな。

終盤の怒涛の台詞、世界に浸るというより必死に理解しようとしていた時間が結構あった。メルヘンパラソル見てればすぐにピンと来るけど、見てない人はついていけなかったんじゃないかなー。
すべてを知った上で、もう一度最初から見たい。1回公演だとどうにもならないよね。DVD売ってくれよ。頼むよ。

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