神保町花月「テルニ」

@神保町花月 16:00 I16

先行でチケットの取れなかった千秋楽、どうしても見たくて、当日券に並んでまでゲットしてきた。
千秋楽も終わったので、ネタバレと感想を一挙に。

丘の上から街を見下ろしていた春崎(関町)は、友人の月野(横山)に声を掛けられ振り返った。
「僕の誕生日が、母さんの命日になるなんてね」
この街に足りないものはお祭りだと力説する春崎。学校という言葉に固まった春崎に謝り心配する月野。
「僕、そろそろ行くね」「また明日」

いくつもの白黒写真と出演者の名前が映し出されるオープニング。
『コノ丘カラ見エテイル景色ニ何ヲ想ウ』

ごめん、大丈夫?とひたすら謝る月野。春崎は、同級生の松島(西島)、高木(文田)、半田(赤羽)、原(根建)から陰湿ないじめを受けていた。教育委員会副会長の父を持つ松島がいるので、担任(川田)も助けてはくれない。
みんなで万引きをしたとき、逃げ遅れた月野を助けるために駆けつけた春崎が捕まり、全員が捕まってしまった。そのせいでいじめが始まった。しかし4人は、むかつくから、おもしろいからやっていると言う。
父(児玉)は母親の葬式に来なかった息子に対して、お前のせいで母さんは死んだ、と言ってしまう。帰りの遅い息子を心配してどしゃ降りの中に飛び出した母親は、そのまま事故に遭って亡くなった。葬式で母親の父から、お前を一生許さないと脅された父。靴などを隠されて帰りが遅くなった、あいつらのせいで母さんは死んだんだ、と家を飛び出す春崎。
車道に飛び出そうとした春崎を止めた老人(橘)は、命を拾ったと思えば何かが変わるだろう、やり残したことは無いのか?と訴えて立ち去る。老人の夢もまた、孫と一緒に祭りをすることだった。
「僕は、母さんと僕の夢のために生きるよ」

10年後。春崎は4人の家族を手に掛け、テイクアウト弁当チェーン新規出店担当の半田、警備員の原、アパレルショップの松島と高木、それぞれの働く職場に潜入し直接対峙していた。
同じ痛みを、もっと痛みを与えてやると言う春崎。
丘の上から街を見下ろしていた春崎は、友人の月野に声を掛けられ振り返った。
「さっき父さんも殺してきたよ」
月野の首を締め、君は僕を殺した殺人犯として生きていくんだ、と言い残し、咳き込む月野の目の前で丘から飛び降りた。
「息をしない僕の周りに人だかりが出来た。お祭り騒ぎだ。僕の夢は叶った」
10年前春崎に声を掛けた老人は、春崎の祖父だった。父親を殺してくれた、わしの夢も叶った、と新聞を丸めて捨て、蚊取り線香に火をつけた。

エンドロール後、明転した舞台には、作家(松橋)と編集者(田所)の姿が。
「…て、いう話なんだけど、どうかな?」「暗い、暗すぎますよ先生!」
混ぜていた絵の具を台本に零してしまう編集者。怒る作家に、色鮮やかに染まってしまった台本を持ち上げ、編集者は言い訳をする。
「僕が楽しくしておきましたから!」

丘の上から街を見下ろしていた春崎は、友人の月野に声を掛けられ振り返った。
「僕の誕生日が、母さんの命日になるなんてね」
この街に足りないものはお祭りだと力説する春崎。学校という言葉に固まった春崎に謝り心配する月野。
「僕、そろそろ行くね」「ばいちゃ」

いくつもの色鮮やかな写真と出演者の名前が映し出されるオープニング。
『コノ丘カラ見エテイル景色ニ何ヲ想ウ』
白黒のタイトルがカラフルに彩られ、混ざっていく。
『テルニ』

と、いった感じで、救いの無いひたすら暗い話から急展開、ここから9期のイチャイチャが始まる。
カラーバージョンは、ストーリーの流れは同じだけど、いじめや復讐に使われる小道具が様々な変化を遂げている。そのため、誰も傷付くことはない。
顔に押し付けられる上履き→ファンデーション。
無理矢理着せられる体操着→白いタキシード。
弁当に入れられるペン→カレー。
背中に貼られる消えろと書かれた紙→一万円札。
警棒とナイフ→マイク。
熱したアイロン→冷えピタ。

スライドで出演者の過去写真が流出したり、関町さんと根建さんが嵐を歌い踊ったり、盛り上がる仕掛けが満載。4日目からは児玉さんが女装して登場。
さらに盛り上がるゲスト登場シーンは3箇所。小便を掛けられる犬、春崎の自宅にいる猫、松島と高木の職場にあるマネキン。白黒バージョンではただの小道具だったものが、カラーバージョンではゲストがそれぞれ着ぐるみや衣装を着て登場。
【犬】20日・ゆったり感江崎、21日・しずる池田、22日・えんにちアイパー、23日・えんにちアイパー、24日16時・ゆったり感江崎、24日19時・山田カントリー浅井、25日・畑中しんじろう
【猫】20日・ゆったり感江崎、21日・しずる池田、22日・えんにち望月、23日・えんにち望月、24日16時・ゆったり感江崎、24日19時・えんにちアイパー、25日・畑中しんじろう
【マネキン】20日・ゆったり感中村、21日・しずる村上、22日・2700八十島、23日・サヨナラダンス滝野、24日16時・ゆったり感中村、24日19時・えんにち望月、25日・パンサー菅

出演者のセリフやゲストの動きは2つの芝居がリンクしていて、首脳陣の手腕にはひたすら驚かされる。しかしそれを無視してやりたい放題なゲストもw
これは、と思ったリンク箇所。
「締めてやるよ」→首の代わりに蝶ネクタイを締めてくれる。
「先生、頭おかしくなっちゃったんじゃないの?」→川田さんが華やかな髪型に変身。
「これはゲームだよ」→ウサギの死体の代わりにWiiが登場。
「これは取っとくね」→背中に貼られた消えろと書かれた紙の代わりに一万円札を剥がして自分のものにする。
「おまえが言ってたゲームでしょ」→嵐の歌詞に繋がる。
「ふざけてない、真面目だ」→パーティ用メガネを掛けさせられる。
「あとはスイッチを入れるだけだ」→低周波治療器のスイッチを入れられる。

そして、カラーバージョンはエンディングが少し異なる。
誰も不幸になることはなく、春崎はみんなの協力を得て祭りを復活させていた。
赤や黄色の大きな花火が上がる。
「商店街はお祭り騒ぎだ。僕の夢は叶った」
10年前春崎に声を掛けた老人は、春崎の祖父だった。孫と一緒に祭りをする、わしの夢も叶った、と打ち上げ花火に火をつけた。

首脳陣の仕掛けた様々な演出に惚れ込んでひたすら通ってしまった公演。
白黒バージョンでは、言うだけ言って自分の手を汚さない立場の西島さんとか、いじめっ子役が心底楽しそうな文田さんの笑顔とか、悲痛な叫びを挙げる関町さんとか、怒り狂う児玉さんとか、見てて怖いんだけど見所がたくさんあった。
なにより照明の演出が本当に美しくて、絵の具をこぼしてからのカラーのオープニング映像や、ラストの打ち上げ花火には鳥肌が立った。
ゲストによっても印象が違っていて、24日19時の浅井さんの犬は大ヒット!誰よりも大きい犬が、根建さんと赤羽さんの2人がかりで抱えられて登場。本来なら横山さんが犬を抱える展開だけど、逆に犬に抱えられてしまう。
千秋楽では、嵐を踊る関町さんと根建さんのバックに、児玉さんとしんちゃんまで登場して踊りまくる。ついついしんちゃんの完璧なダンスを凝視してしまった。
マネキンの部分で様々なセリフのリンクがあるんだけど、中村さんのように全部無視してやりたい放題な人もいれば、望月さんや菅さんのようにキッチリ任務を果たす人もいて面白かった。そういう意味では、私の一番好きなゲスト回は24日19時。アイパーさんの横柄な猫も良かった。カルピス冷えてるよ!マネキンの望月さんもイキイキしてた。スタイル良いのね。千秋楽の菅さんのワクワクした感じの楽しそうな笑顔も良かったなぁ。

演出家の悪ふざけと名高い24日19時公演、春崎の関町さんと、その父の児玉さんが役をまるごと入れ替えて公演。
台本のうちの3分の1程度が関町さんのセリフなのに、その1回だけの悪ふざけのためにすべてのセリフを覚えた児玉さん。他の出演者が練習に付き合ってくれないから、望月さんを捕まえて練習していたらしい。
関町さんほどいじめられっ子の感じは出てなかったけど、児玉さんバージョンもなかなか。カラーバージョンでのはじけっぷりは本領発揮だった。

千秋楽のカテコで、初めて首脳陣が登場。舞台セットの後ろから顔を出したものの、まったくウケなくて照れる2人。
松橋さんがこの話を作ったときにやりたかったボケは2つだけ。橘さんの「餅・ナス・ザーサイ」と、文田さんの鮮やかな色合いのパンツ。どちらも本編にはあまり関係ない…。
「テルニ」というタイトルは「似てる」のアナグラムだと松橋さんが説明。チラシ担当の田所さんも、瓜を2つ描いたのは「瓜二つ」の意味だと説明。2種類の芝居を意味していたらしい。客席から感嘆の声が挙がる。
白黒バージョンはオープニングに「テルニ」ではなく違うタイトルが出ているので、その分のお金はもらっていないとのこと。カラーバージョンのオープニングで初めて「テルニ」とタイトルが出る。そこからが本当の公演。

連日通い詰めて、9期で頭がいっぱいになった5日間。2本ずつの芝居を見ているわけだから、総計12本。もうセリフも覚える勢い。
暗すぎる話を作る松橋さんも、すべてを壊しつつラストにちょっと泣かせる演出をする田所さんも、出演者も、ゲストも、何もかもが楽しかった。ゲストもそれぞれの個性が出てて、グダグダな回もあったけどそれもまた一興。このへんはリピーターの醍醐味かな。
囲碁将棋の同時ジャンプとか、サイレントあっかんでぃとか、川田さんの髪型バリエーションとか、西島さんのボイスチェンジとか、色々と思い出すことは多いけど、書いてたらキリがない!私にとっては夢のような公演だった。
9期のみなさん、本当にありがとう!

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