はなやか関西「文化の道」フォーラム

@観世能楽堂 14:00

いいむろなおきマイムカンパニーを見るために、GINZA SIXの地下にある観世能楽堂へ。こんなところに能楽堂があるとは知らなかった。

・主催者挨拶
関西広域連合主催のイベントで、テーマは「ものがたり街道~三十三所巡礼~」。
2020年の東京オリンピックパラリンピックのインバウンド需要に向けて、関西の文化を広めるために初のイベントを開催。連合に加盟している県や市の中で担当が様々に分かれているが、京都市は文化を担当しているとのこと。

・講演「解説~ものがたり街道とは~」
文化プロデューサーの河内厚郎氏が登壇。雪の影響で早めに東京へ来ていたため、話題の富岡八幡宮へ行ってきた。
現代はワイドショーで様々なスキャンダルやニュースを流すが、江戸時代は浄瑠璃などの演目として演じられた。江戸時代が平和だったのは、大衆がそういう文化に触れてストレス発散をしていたからでは?
日本最古の巡礼である西国三十三所が1300年を迎えた。これを機に、関西で新たに33箇所を選んだのがものがたり街道。歌舞伎、能、文楽の舞台となった場所を選出し、地図とともに解説した冊子を作成。インバウンド需要を見込んで英語にも翻訳。
こういうものを作るとき、意外と滋賀県がゴリ押ししてくる、という極秘情報。現代の教科書にも載っている平安時代や江戸時代などの言い方は100年ほど前に制定された。その際、安土時代を入れてくれと嘆願したのが滋賀県。こういうとき、大阪府はあまり手を挙げることは無いので、史実に名を残すことは少ないらしい。

・文楽素浄瑠璃「一谷嫩軍記 須磨浦 組討の段」
平敦盛、玉織姫、熊谷直実の物語。簡単なあらすじは配布されたプログラムに書かれている。
咲くやこの花賞を受賞した、太夫・竹本織太夫、三味線・鶴澤清志郎の両氏による演目。
歌うような抑揚とともに語られる物語と、合間に入ってくる三味線の悲しげだったり激しかったりするリズム。盛り上がるシーンは意外とリズミカル。
正直、言葉は2割くらいしかわからない。あらすじでストーリーを知っていたものの、聞こえてくる単語で今はどのシーンなのかを探るのに必死。素浄瑠璃の楽しみ方がわからぬままだった。人形浄瑠璃だと、人形の動きでどんなシーンかわかるのかもしれない。

・マイム「夢みる旅人」
マイム俳優・いいむろなおき氏が結成したカンパニーでの演目。今回はいいむろ氏含め7名。
花道からスタスタと入ってきたスーツ姿のいいむろなおきさん。キンチョーしてます!マイムを初めて見る方は?と客席に尋ねると、ほとんどが手を挙げたようだ。だいたいこんな感じ、と、目の前の壁を触ってみたりドアを開けてみたり背中が壁にぶつかってみたり。おお…とどよめく客席。ぶつかった見えない壁を脇にどけつつ話を続ける。パントマイム=黙劇。
花道から、白い衣装に身を包んだ6名の男女がゆっくりゆっくり走ってくる。不審そうな表情でお互いに様子を伺う白い人々といいむろさん。徐々に白い人々の動きに巻き込まれ、翻弄され、放り出され、ヒソヒソされ、ビビられ、松の木になってごまかされ。開けても開けても次々に現れるドア、時間を気にしつつ何かを探す人々、うずくまる人々がやがて芽吹き、そして枯れていく。楽しそうな笑顔で盛り上がった人々は、今度は笑顔で花道を走り去る。それを見送り、やはり笑顔で走り去るいいむろさん。
全員が足袋を履いての演技。足袋≠旅…いやなんでもない。徐々にスピードアップしていく、どこまでもドアのシーンがとても好き。いいむろさん、女性3名、男性6名、という構成で、チューチュートレインのようなあのシーンが綺麗に背の順になっていたのが素晴らしい。能舞台は2方向から見られる不思議な舞台。横からの視点も気になる。舞台背景として描かれている松の木に6人で扮してドヤ顔決めてたのも好きだな。この舞台だからこその遊び心か。
最後に全員で並んで挨拶、なんだけど、田中さんだけサッサと花道を歩き去って、花道の終点で客席を見てアレ~!?って顔してたのズルいwあれは仕組まれていたのか素なのか…!?

・パネルディスカッション「ものがたり街道へのいざない」
パネラーは、作家・有栖川有栖、JTBパブリッシング取締役・楓千里、浪曲師・春野恵子、文化プロデューサー・河内厚郎。
意外と知られていない、ステレオタイプではない関西の魅力について語りたい。
大阪生まれ大阪育ちの有栖川さん、一番長く大阪を離れたのは15日。書いているのはミステリー作品なので舞台はどこでもいいけど…大阪や京都を主に書いている。ロンドンにシャーロック・ホームズがいるように、自分の街に探偵がいる作品を書きたかった。昔は編集者に、京都は舞台としていいけど大阪はちょっと…と言われていた。しかし京都を舞台にしたミステリーは大御所がみんな書いている。
大阪の天王寺七坂を舞台にした「幻坂」という有栖川さんの作品を激推しする河内さん。私が解説を書いたんです!その事実をすっかり忘れていた有栖川さん。
春野さんは浪曲をやるために大阪へ移住。自己紹介を浪曲で。元々は電波少年のケイコ先生としてテレビにも出ていたが、時代劇とミュージカルが好きだった自分が出会った浪曲を運命と感じ、師匠に弟子入りして活動を始めることに。大阪の文化に触れていると、土地のパワーを吸収している気持ちになる。
楓さんは旅好きなメンバーたちで企画した旅を毎年決行している。文楽を見て舞台となった場所を観光したり。関西を旅すると、史実が密接に関係していることを実感する。
意外な場所にスポットライトを当てた作品を書いてみたい有栖川さん。「幻坂」で天王寺七坂を舞台にしたら、大阪人ですら坂の存在を知らない人がいた。
人間は物語を1日中食べながら呼吸しながら生きている、と有栖川さん。偉人の墓や作品の舞台を巡ることを“聖地巡礼”と呼んだり。最近ではアニメやマンガの舞台を巡る人たちも多い。日本のアニメは外国人にも人気なので、何気ない喫茶店なども聖地として観光地になることもある。日本の文化である忍者や陰陽師などをアニメから知る外国人も多い。
時代劇好きな春野さん、吉村寅太郎を盛り上げたい。駅前の銅像や時代劇にも取り上げられることは少なく、ガッカリしているファンが多い。
旅行のきっかけが変わってきていると楓さん。今はSNSで写真がシェアされるため、あの景色の場所に行きたいという需要も多い。
江戸時代の人形浄瑠璃は現代のアニメだという有栖川さん。歌舞伎の見得やだんまりなどは映画表現の先駆けとも言われているが、人形による表現は、誇張し人間を超えたアニメの表現なのでは?と。
2020年、東京でスポーツの祭典であるオリンピックパラリンピックが開催されるので、関西では文化のオリンピックを行いたい河内さん。今日見たマイムのような身体表現の文化も発信したい。軍事大国、経済大国を経た日本、今後“ものがたり大国”を目指したい。
春野さんは海外公演のために英語訳にした浪曲を作成。ただの直訳では伝わらないため、より深く浪曲を知ることが出来た。社会人や外国人のための浪曲イベントも行っている。
浪曲を知るきっかけになった落語を生で見て、メディアに頼りすぎず自分の目で見に行くことが大事だと思った春野さん。ほんの少しのきっかけが楽しい旅になる、と楓さん。

マイム演目を見るために申し込んだ今回のイベント。関係者席を除いても400席はあろうかという広さなのに満席。老若男女が入り交じる客席は見慣れない光景で不思議な気分。みんな何を見に来たんだろう?
正面ブロック最前列の柱側という良い席を確保できたので、未知の世界もカンパニーのマイムも目の前で堪能できた。
活字中毒でミステリマニアだった学生時代によく読んでいた有栖川有栖作品、大人になって作家本人のトークを聞くことになろうとは。昔から上方文化が好きなので、関西が舞台になってるのも好きだったな。パネルディスカッションとか初めて聞いたけど面白い。あと進行役の女性のリードがとても上手い。
この舞台のために作ったというカンパニーの作品、他の場所でも是非再演して欲しい。松の木はあの舞台じゃないとイマイチ伝わらないかもしれないけど…。花道から出てきたり途中で止まったり、という表現も普通の舞台では難しいかな。つくづく特殊な舞台だ。
これが抽選とはいえ無料で見られるなんて贅沢だわ。関西で文化オリンピックが開催されるなら、是非ともカンパニーも参加で!

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