新・伝統舞踊劇 幻祭前夜2018~マハーバーラタより

@流山市文化会館 14:00 D-19

小池博史ブリッジプロジェクトの作品のうちのひとつ。今回は再演らしい。谷口界さんの出演に釣られて、今まで見たことのないジャンルの舞台にも足を運ぶようになってきた。

配られたチラシに、簡単なあらすじや出演者が主に演じる役名が記載されているのはありがたい。

開演前、薄暗い照明で大城貴幸さんの三線の演奏が始まる。途中から下町兄弟のパーカッションも入ってくる。薄布で隠された衣装と仮面と小道具たちが期待を煽る。
小池博史さん登場。マハーバーラタとはふたつの一族が争うストーリー。日本語、中国語、ヒンディ語、琉球語が使われるので字幕は出るが、見なくてもわかるように作ってあると説明。

異なるジャンルの舞踊家を中心に、俳優・ダンサー、京劇、そしてアクロバット。およそ同じ舞台に上がる機会は無さそうな出演者たちが、ダンス、アクロバット、手拍子、歌、ラップ、様々な表現でひとつのストーリーを作っていく不思議な舞台。生演奏で使用される楽器も、打楽器弦楽器に加えて振り回して音を出すサウンドフォースまで使われていたり。
背後に設置されている衣装と仮面のブースで準備している出演者の様子も見えるので、とにかく目が足りない。字幕見なくて良いと言われたけど、やっぱり気になって見ちゃうし!
タイトルの舞踊の部分だけ見て、生演奏で舞踊かな?と勝手に思っていたら、セリフもあるしラップもあった。ラップ!普通に手拍子をしながらだったり、手の甲と手の平で音を出していたり、足を踏み鳴らしたり、ボディパーカッションやストンプのようにも見えるシーンも。
唯一、マイクを使ってシャウトする福島さんの歌声と雄叫びにゾワゾワ。悲痛なシーンだけどカッコイイ…!

お目当ての界さんは3役。全員が登場する白装束での無の舞いから、衣装に着替えて前に出てきて顔を上げた瞬間、完全な悪役の顔になっている!舞台上で顔が見えてるときはほぼ悪い顔、という界さんが楽しめた。目を見開いて顎を上げて見下してる笑顔がめちゃくちゃ怖いんだよ。
どっしり構えた悪役って感じの川満さん、そんな川満さんを兄者と慕い何でも言うことを聞いてしまう極悪な界さん、兄弟ではないけど付き従っている土屋さん。クル家の卑劣なキャラクターと、ハヌマーンのときのちょっと可愛らしくおちゃらけた猛獣たちのキャラクター、同じ3人が演じているとは思えない動きの変化に驚く。
界さんと土屋さんの、組手のような対峙したダンスというか動きというか、そんなシーンがいくつも見られて眼福。手の甲と手の平を叩いたり、手首を交差させて手をヒラヒラさせたり、3人が同じ動きでぐるぐる歩き回るシーンも何度か見られた。相手を煽ってるみたいなあの演出好き。
武術とマイムが組み合わさったみたいな、アクロバットともちょっと違う界さんの猛獣の動きがとても好き。雄々しい動きと可愛らしいグルーミングのギャップが素晴らしいよ。肩から先を段階的に動かす動きと、四つ足のカッコ良さと可愛さが融合して素晴らしいキャラクターになっている。いろんなジャンルの調和って凄いんだな。海を渡るハヌマーンのシーン、赤い布をはためかせて跳躍してる界さんがとてもカッコ良かった。その後の1匹の猛獣として狙われるキャラクターとの落差よ。
界さんの一番動きが好きな役は出番少なかったな…。4部あるうちの今回は2部なので、他の公演では出番があるのかも。空を飛ぶキャラクターなので、風も起こすのかな?スモークで全然見えない中から突然飛び出してくる、ヒラヒラと小刻みな手の動きと高い位置での跳ね方が凄い。
吊り照明が徐々に上がっていくときの、照明に一番近い界さんの幻想的な雰囲気が素晴らしかった。棒を回す仕草もカッコイイわラストのド迫力なラップシーンもカッコイイわ、感情が追いつかない。
アンコールで出てきたときの素の笑顔にホッとする。悪い顔しか見てない!ニコニコしながらインドっぽい動きのダンス…あれは何の舞踊なんだ!?とても楽しそうでこっちもようやく笑顔に。ずっと凝視してたからね。袖から小池さんが出てきたときに土下座してたのが見えたんだけどなんでw

小谷野さんは復讐に燃える激しいキャラにピッタリの豪快な所作でカッコイイ。こちらも復讐に燃える福島さんの激しくも美しくたまに官能的な動きとの調和が素晴らしいね。
YASUCHIKAさんは正義の人がハマる精悍な見た目と動き…なんだけど、宦官のときのナヨナヨした喋りと動きに笑ってしまった。宦官だからピンクでオネエ…なんで急にステレオタイプな演出なのかw
パーンドゥ家の森の中での修行のシーンが好き。それぞれの揃った動きから、徐々にキャラクターに応じて動作が変わっていく。ひたすら鍛錬に打ち込むYASUCHIKAさんのストイックさの表現が素晴らしい。
張さんのカンフーのような動きがカッコ良かった。池でのヤマの問答シーンが美しいね。背後の字幕を見つつ意味を考えつつ感服していた。京劇といえばド派手な衣装と装飾と化粧と胡琴をイメージするんだけど、素の状態で演じると武術家にも見えるなぁ。
吉澤さんのひ弱かつ優柔不断な王様役が…切ない。なんかもうずっと嘆いてる。ナクラ役としてのカッコイイシーンもそんなに無いしな…切ない。
ムーンムーン・シンさんのいかさま師の表現が凄い。なんだあの歩き方と発声は。仮面だし表情わからないはずなのに、あの動きだけで嫌なヤツ全開なのが凄い。幼い王子の可愛らしい跳ねっ返りなキャラも可愛らしい。ギャップが凄いな!

終演後、アフタートークがロビーにて行われていた。せっかくなので印象的な部分だけメモ。
決まっていた出演者が半分以上変わって、14日間での稽古。
初演とは琉球音楽が入ったことでイメージが変わった。再演というより新しく作り変えていく面白さ。
様々なジャンルに別の橋をかけていく。建築、映画監督、そして舞台という異端な経歴なので創るものも異端。
アジアのアーティストをキャスティングし、西洋的ではなく循環構造の思想を重視。アジア的な音楽のゆらぎも特徴。
マハーバーラタという『滅びの物語』を自分たちに問うていかないと危ない時代。
ラップとインド音楽と沖縄音楽が混ざり、出演者のバックグラウンドもバラバラ、これをいかに調和できるか。
バリのアーティストが作った仮面を使っている。
ブリッジプロジェクトは、フレキシブルな頭を持っていないと難しい、これしかできません、だと困る。伝統芸能をつなぎ合わせる手腕も大事。
アウェイの地で、自分とは何かを問い、調和していく。
異なる文化で育ったアーティストやパフォーマーを共有化、面白がって演出するので、パフォーマーもいろんな表現が出来る。
シャクニ役のムーンムーン・シンさんの発声はおととい決まった表現。彼女の出身地でいわゆるバッドワードを出してもらったらああなった。本人は舞台上でこんなこと言うなんてと戸惑っていた。
沖縄音楽は日本人として外せない。
言葉は意味だけじゃない。過去の公演はクメール語でやったり英語でやったりもしたけど、どこか借り物っぽい。出演者の母語が響く。言葉の持つ力と魂と響き合う、リズムやハーモニーで楽しめる。

大道芸人じゃなく舞台役者としての界さんはあんな感じなのね。見に来て良かった。また違うカッコ良さだ。どんな役を演じていても、やっぱり腕や手の動きが美しいなぁとため息をつくばかり。そしてもはや定番の倒立技が凄まじい。長い裾の衣装でお顔が見えませんが!
見る前はどの役を誰がやってるのかわかるかな?と不安だったけど、これだけ個性的なメンバーなら仮面でもわかる!
来週は多摩でもう一度見られる。もう少しマハーバーラタについて勉強しておこうかな。前後のストーリーも気になるし。

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